館長コラム
ドイツ生まれの木の玩具
2026年8月
佐賀市立図書館では、中央ギャラリーやロビーギャラリーを活用し、さまざまな展示を行
っています。その中で、私が特に心を動かされたのが、7月18日から8月9日まで2階中
央ギャラリーで開催している「ドイツ・エルツ地方ザイフェンの木の玩具展」です。
この展示では、約300年前から受け継がれてきたドイツ・エルツ地方ザイフェンの木の
玩具を紹介しています。
夏休みに合わせ、子どもたちにも楽しみながら木の玩具の魅力に触れていただけるよう、
無料で開催しています。展示されている玩具は、所有者である「ターシャ・テューダー絵本
の会」の皆さんが、長年大切に守り、受け継いでこられた貴重なコレクションです。
一つひとつの玩具には、職人の確かな技術やものづくりへの思い、そして世代を超えて大
切にされてきた人々の暮らしが刻まれているように感じました。
ドイツ・エルツ地方のザイフェンは、かつて鉱山の町として栄えました。しかし、鉱山業
の衰退をきっかけに、人々は地域に根付いた木工技術を生かし、玩具づくりへと新たな道を
切り開いていきました。
時代や産業が変化しても、地域の技術や誇りを受け継ぎながら、新しい価値を生み出して
いく人々の歩みは、遠く離れた日本に暮らす私たちにも、大切なことを教えてくれます。
展示には、長い年月を経た木の玩具も並んでいます。時を重ねることで少しずつ色合いを
変えた木肌からは、多くの人々に愛され、大切に受け継がれてきた年月の重みと、木ならで
はの温もりが伝わってきます。
中でも有名なのが、くるみ割り人形です。「ターシャ・テューダー絵本の会」の皆さんか
らは、くるみ割り人形には、当時の職人たちや庶民が抱いていた社会や権力者への思いが込
められていたともいわれていることを伺いました。「せめて自分たちの代わりに固いクルミ
を噛み砕かせよう」という庶民のささやかな抵抗心やユーモアが込められていることを知
り、木の玩具は単なる遊び道具ではなく、人々の暮らしや歴史、文化を今に伝える存在でも
あるのだと、改めて感じました。
日本では、プラスチック製のおもちゃが身近な存在となっています。だからこそ、木のぬ
くもりや手仕事の美しさに触れることで、おもちゃには遊ぶためだけではない価値がある
ことを感じる機会になるのではないでしょうか。
図書館は、本を読むだけの場所ではありません。本や展示、講座などを通して、新しい文
化や歴史、人との出会いが生まれる場所でもあります。一つの展示との出会いが、新たな興
味や学びのきっかけとなり、人生を豊かにすることがあります。
ぜひ、この機会に佐賀市立図書館へお越しいただき、ドイツの小さな村で育まれた木の玩
具が語りかける歴史や文化、そして職人たちの思いに触れていただければと思います。
30年先へつなぐ図書館
2026年7月
図書館で仕事をするようになってから、日々さまざまな発見があります。図書館を支えて
くださるボランティアの皆様の活動、司書をはじめ職員一人ひとりが利用者のために工夫
を重ねる姿、そして普段は利用者の皆様の目に触れることのない施設の裏側。知れば知るほ
ど、図書館は多くの人に支えられていることを実感しています。
時には、思いがけない出来事に直面することもあります。
5月の大型連休を前に、カフェのエアコンが故障するという出来事がありました。修理に
は時間がかかる可能性がありましたが、暑くなる前に復旧し、利用者の皆様に大きなご不便
をおかけせずに済んだことに、担当者とともに胸をなで下ろしました。
また、ある朝は駐車場のバリカーポールが下りず、職員総出で対応したこともありました。
利用者の皆様には見えないところでも、図書館では毎日さまざまな出来事が起きています。
こうした出来事は一見すると小さなことですが、日々の業務を通して、施設の老朽化を実
感する場面は少なくありません。
図書館は、本が並ぶ書架や閲覧席だけで成り立っているわけではありません。利用者の皆
様が快適で安全に過ごせる環境は、空調や電気、給排水設備、エレベーターなど、多くの設
備によって支えられています。しかし、その多くは開館以来30年間使い続けられており、
実際に施設を見て回ると、雨漏りや設備の老朽化は想像以上に深刻でした。部分的な修繕だ
けでは対応が難しく、安全に図書館サービスを提供し続けるためには、大規模改修は避けて
通れない課題であると痛感しました。
工事期間中は本館を休館することになりますが、検討中のサテライト窓口をはじめ、7つ
の分館・6つの分室、自動車図書館、電子図書館を最大限活用し、市民の皆様の読書環境を
できる限り維持しながら、図書館サービスを継続してまいります。
今回の改修は、古くなった施設を修繕するだけではありません。安全性や快適性を高める
とともに、これからの時代に求められる機能を備え、30年先も市民に愛される図書館へと
進化させるための「未来への投資」です。
図書館は、市民の知る権利や学びを支える大切な公共施設です。その役割を次の世代へ確
実に引き継ぐためにも、今、この改修に取り組む必要があります。
これからも、市民の皆様とともに、30年先へつながる図書館を育んでいきたいと思います。
